Ｋのメモ Apr 16,2011

額田王-線上のゲシュタルト4

額田王の出地、養育されたと思われる額田の郷をT線上に記しましたが、

父とされる鏡王を見ることで、額田王の姿がもう少し濃くなるのではないかとイメージします。

鏡王については系譜未詳とされています(注1)が、

『紀』天武天皇二年の条に「天皇、初め鏡王の女額田姫王をめして十市皇女を生しませり」とあり、

額田姫王とは額田王であり、鏡王の女(むすめ)であること、

十市皇女を生んだことが記されています(注1)。

また、『紀』天武天皇十二年の条に「天皇、鏡姫王の家に幸まして、病を訊ひたまふ」とあり、

注釈に「鏡姫王が藤原鎌足の嫡室、鏡王女、鏡女王とも書く」と記され、

「鏡王の女(むすめ)で額田王の姉(あね)という説もある」ことが記されています(注1)。

これらから「額田王は鏡王の女(むすめ)」であり、「姉(あね)に鏡女王がいた」と仮定し、

鏡王の所在地をイメージしてみます。

天智天皇、鏡王女に賜ふ御歌一首

妹が家も継ぎて見ましを大和(山跡)なる大島の嶺に家もあらましを(2-91)

(大意)

あなたの家をいつも見ることができたらなぁ。大和の大島の嶺に家があったらなぁ。

あなたの家をいつも見ることが出来るだろうに。大和の嶺に自分の家があったらなぁ。

鏡王女、和へ奉る御歌一首

秋山の樹の下隠り逝く水のわれこそ益さめ御思よりは(2-92)

(大意)

秋の山の木の下を隠れて流れていく水の水かさが増すように、

あなたが思い下さるよりは、私の方こそ一層多く思いをお寄せしておりました。

天智天皇と鏡王女の相聞歌の背景を、

谷馨さんは中大兄皇子が飛鳥京のおり、鏡王女のところに通ったが、王女の家が遠く

近くであってほしいことを願った歌と推察する中、

「山跡(やまと)なる大島の嶺」より「山跡」に着目され、古代大和朝廷の中心となる広域を示し西隣に「鏡作郷」が位置し

現、八尾に鏡作坐天照御魂神社がある、と記してます。

そして、鏡王が鏡作郷を領有していて、鏡王女もこの地で育ったのでは、と推測されています(注2)。

線上に「鏡作坐天照御魂神社」を探すと、

(図17)

(写3)

T線上に「鏡作坐天照御魂神社」が位置します。

谷馨さんは「大島の嶺」は

「皇子がいた飛鳥の宮とこの地の間に「大島の嶺」があったのでは」と記していますが、

他方、皇子が難波宮(赤点)にいた時の歌として、

「大島の嶺」は生駒信貴山系、高安山という推察もあります。

これらのイメージをコラージュさせると、

(図18)

皇子(赤点、難波宮、2-91)が鏡王女(2-92)に想いを寄せ贈った情景が

線上(赤点線)に見えてくるのです。

そして、この線上にもうひとつ鏡王女の歌が見えてきます。

鏡王女の歌一首

甘南備の伊波瀬の杜の喚子鳥いたくな鳴きそわが恋ひまさる(8-1419)

(大意)

神なびの伊波瀬の森の喚子鳥よ。激しく鳴かないでおくれ。私の恋心が一層つのるから。

この歌から鏡王女が伊波瀬の森近くに住んでいたとされ、

伊波瀬(いはせ)の森が龍田川(大和川)三室の流域と推察されています。

(図19)

先に記した額田の郷(線上のゲシュタルト2)も合わせ、

これらからT線に沿う鏡作坐天照御魂神社近辺に

額田王の父、鏡王が住んでいたのではないか、とイメージがふくらむのです。

夏恵子が「やっぱり、線だったね」といってくれますが、

「さて、これからだよ」。

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(注1)『日本書紀 下』 岩波書店 1965 

(2-91・2-92・8-1419・大意) 『万葉集』 日本古典文学大系 岩波書店　1957より

(図17)(図18)(図19) 『電子国土ポータル』より加筆

(注2)(写3)『額田王』　谷馨　紀伊國屋書店　1967より

「鏡作坐天照御魂神社」=『鏡作神社」　『奈良県の地名』　日本歴史地名大系　平凡社　1981

『飛鳥迷宮』　高田和広　2009 「二本の線」より抜粋加筆　

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