SSブログ

Kのメモ MAY 31,2013 [店雑記・Kのメモ]



eizanji.0529.JPG
(写1)


郷里の美人

私の郷里、大和五條には二人の美人がいます。

今も私のなかにそっと仕舞っています。

ひとりは栄山寺八角堂。(写1)

音無川(吉野川)に片添うお堂は、
藤原仲麻呂が父母供養のために建立したものとされています。


白銀(しらかね)の叔父の家を訪ねる時、元気かな、と車中から遠方を見つめながら
ほん手前を過ぎていきます。

.......................................


このお堂のことは立原正秋さんの小説『春の鐘(下巻)』(注1)に記されており、

主人公鳴海が恋人の多恵とかさね、一緒に訪れるのですが、

「、、、鄙(いなか)にはまれな美人だろう」と多恵に語るくだりがあります。

美しく見えたのは、パルテノン神殿の柱のように、八本の側柱を内に傾けるなど、
柱、梁の構造にそっと潜ませた工夫が生かされていたからかもしれません。


かえこが
「あとひとりは」と。

kawara30530..JPG
(写2)

飛鳥川原寺の創建瓦。

飛鳥川に沿った川原寺の軒丸瓦は彫りが深くてとてもシャープで精細な逸品。

この瓦は栄山寺領でもあった荒坂窯で作られたとされています。


遠く昔、阿陀から飛鳥にお嫁に行ったのでしょう。


かえこ「おばさん、見たことあるの」

「あるわ。いろんな瓦と並べてあってもすぐにわかる美人」





..........................

そして、
その川原寺と栄山寺が見えない糸でつながっています。

かえこ「見えない糸って」

kameishi20530.JPG



川原寺の寺領であったとする地に「亀石」といわれている石造物があります。

この「亀石」の顔が栄山寺の方を向いているのです。

さらに覗くと裏山頂きにある、改葬されたとする父(武智麻呂)のお墓のところを。


bijin0531.JPG
(図1)

かえこ「おばさん、それ偶然じゃないの」

「そうかもしれない」

....................................


現在、栄山寺の地は五條市小島。

「ここ小島って言って昔、吉野川と宇智川に挟まれた小さな島みたいだったよう」と。

小島に住む友人のSさんに教えてもらったことがあります。

片方、
川原寺の地は以前川原宮であったのではとも。

宮は池であった地を造成してつくった、と。

ボーリング調査から
ヘドロ状の底土は川原寺伽藍全域におよんでいて、中金堂から西金堂すみあたりだけが
中島状に高くなっていたようです。(参1)

..................................


「かえちゃんも美人よ」

かえこ「どうして」

「黄金矩形の中にほぼおさまるじゃない」

kaeko20529.JPG

かえこ「わかんない」



........................................................................

(写1)『栄山寺』田村吉永 著 河原書店 1948より加筆

(写2)(参1)『飛鳥の寺と国分寺』坪井清足 著 岩波書店 1985より加筆

(図1)『五條の歴史と文化』「五條市周辺の窯跡」泉森 皎 図より加筆

(注1)『春の鐘(下巻)』立原正秋 著 新潮社 1978 


《追記》
過去の記事のなかに「川原寺の伽藍配置」に黄金矩形が潜むことを記したものがあります。
ご参照ください。






コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

Kのメモ MAY 29,2013Kのメモ JUN 1,2013 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。