SSブログ

Kのメモ APR 24,2014 [店雑記・Kのメモ]



Cmark.jpg

夏恵子の珍道中記

須弥山-10-1

 坂田尼寺の寺内にあったとした珍石は、
推古二十年(612年)に渡来してきたペルシア系の路子工が、
須弥山と呉橋を構成しつくったものと推理した。
 
夏恵子は珍石の形状から頭部の伏鉢状のものを須弥山とイメージしたが、
その形体が須弥山である確証はなく、さらに形を追い求めてみることにした。

定方晟卯氏の
『須弥山と極楽』から「須弥山」もとに概要を記す。
 
須弥山は古代インドの宇宙観で中心にそびえる聖山として崇拝される山で、
バラモン教、仏教、ジャイナ教、ヒンドゥー教に共有されてきた。
仏教が中国や日本に伝わり、
ヒンドゥー教がインドネシアなどに伝わるにともないこの宇宙観も共有され、
現世界の聖山としてカイラス山や
スメル山、
日本では妙高山、弥山などとして崇拝されている。


Bsumisen4.jpg

須弥山説は
インド五世紀の仏僧ヴァスバンドゥが記した仏教の書物『倶舎論』 の一章(世品・せほん)に
仏教宇宙観が示されており、宗教の宇宙観に対する世俗の世界の構成を説明したもので、
須弥山はその中に出てくる想像の山である。
 
なにもない中に風輪という円柱状のものがうかんでおり
円周は無数由旬(10の59乗由旬・由旬は約7㎞)円周と直径の比は3対1とする。
この上芯に直径が120万3千450由旬の円柱状の水輪があり、
その上芯に同径の円柱状の金輪(こんりん)があり厚さは水輪80万由旬、
金輪32万由旬とする。

そして金輪の上層面に鉄でできている外環状の鉄囲山(てっちせん)が囲み、
水深8万由旬の海には四つの州、
東方に勝身州(しょうしん)、南方に贍部州(せんぶ)、西方に牛貨州(ごけ)、北方に倶廬州(くる)がある。

中心(円心)に七つの同心方形の
山に
囲まれ、四方(金・銀・瑠璃・玻璃)で出来た須弥山がそびえている。
州のひとつに贍部州が描かれているがそれが私たちの住む州である。
この州の形は逆台形(ほとんど逆三角形)でインド亜大陸を描いたものとされており、
中に雪山(ヒマラヤ山脈)、北に無熱悩池(むねつのうち)が示され、
その北に香酔山(こうすいせん)がある。
 
天界をみると須弥山の水上(淡水)にある部分は正立方体(すべて8万由旬)で、
下半分に四天王と手下が住んでいる。
仏教では天は神である。


須弥山の頂上には三十三天のすみかがある。
その中央に善見(ぜんけん)という城がある。建物は金装飾され、地面は綿のようなものらしい。
この城の中に殊勝殿(しゅしょうぜん)という宮殿がある。ここに帝釈天(たいしゃくてん)がすんでいる。
城の四方に遊苑地ⓟがあり、その四方に遊び場を有している。
他に円生樹があり、お堂(善法堂)がある。
ここまでが地上にすむ天で地居天(じごてん)ともいうらしい。

空中にも天(空居天)がすんでいる。
須弥山の頂上から8万由旬のところに夜摩天と一族がすむ天宮があり、
その上に覩史多天(としたてん・または兜率天・とそつてん)が住む天宮がある。
さらに楽変化天(らくへんげ)、他化自在天(たけじざい)の天宮がある。

Bsumisen7.jpg
(写-1) 


夏恵子は無限のような世界を描きながら、
「三十三天の住処にいけたら」と思いながらカイラス山を眺めた。

地上にすむ三十三天を含むこれらの天は、
人間と大差はないとされている。
欲望は捨てきれず(欲界)、四天王と手下、三十三天は性器(ペニス)の挿入をせずには欲望の火を消せず、
人間と異なるのは精液がないことだとする。

また上昇位置にある天ほど熱悩からの離脱が早く、
楽変化天においては微笑しあうこと、他化自在天は視あうことにより熱悩から離れられるとある。
これまでの天の世界を欲界と称すらしい。

欲界の世界のさらなる上に色界と無色界があるとする。
色界は「色即是空」「かたちあるものはむなしい」とされ、
欲望をすて、肉体のみを残す天のようである。

彼方へ遠のくような色界であるが、さらにその上界に無色界があり
「かたちのない世界、精神のみの世界」で空間の概念から離れていく。

また一世界という欲界のすべてと色界の初禅の世界を含めたものがある。
小一千世界は一世界が千集ったもの、
小一千世界の千が中千世界、その千が三千大千世界とされ、
一仏国土の世界には地球のような世界が十億あると記されている。
地獄の世界を割愛したが気の遠くなる天界である。
 
このような世界をヒンズー教徒、ボン教徒、仏教徒は
スメル山やヒマラヤ西方に位置するカイラス山に求め崇拝した。
ヒンズー教の聖典とされる叙事詩『マハーバータラ』(世紀前後数世紀かけ成立)には
カイラス山が記されており、
ヒンズー教シバ神の聖座としてシバ派は最大のリンガム(男根)とし現在も崇拝されている。

Bsumisen8.jpg
 

チベット仏教(ヒンズー教)では無熱悩池をマナサロワール湖とし、
図❽のようにチベットの地に合わせ、
東は
馬口から注ぐプラマプトラ河、西は象口から注ぐサトレジ河、南は孔雀口から注ぐラマプ
トラ河、
北は獅子口から注ぐインダス河とし、香酔山をカイラス山と見立て、その頂にライオンが描かれている。
 
仏教『大毘婆沙論』では
無熱悩池から四方に注ぐ水を東は銀牛の口からガンジス河、
西は瑠璃馬の口からオクサス河、
南は金象の口からインダス河、北は玻璃獅子の口からシーター河が流れている。


............................

須弥山頂上にも欲界があるんだ。

珍石は精液のでないペニスを構(つ)くしたもの?

「もしかすると珍石が「マラ石」とみられるのは
このような世界が潜んでいることからかもしれない」と夏恵子は思った。
 
「じゃ、案内板に須弥山をイメージするものがあることを記し、
須弥山石と称すれば、
ちがった世界観をもって見ることが出来るかもしれない」と
珍石を思い浮かべた。

Bchinseki2.jpg




.............................................................................

(須弥山界の図)(説明)『須弥山と極楽』 定方晟卯 講談社 2006より加筆
(写-1)
❽『西蔵・聖地カイラス巡礼』 NHK取材班 日本放送出版協会 1985より加筆
(獅子部分上端切れに付き、加筆する)


コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

Kのメモ APR 23,2014Kのメモ APR 25,2014 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。