Kのメモ APR 7,2014 [店雑記・Kのメモ]
夏恵子の珍道中記
ペニスの表情-3
珍石の由来は不明である。
宮域を表す標石説、西に位置する「フグリ山」からの生殖器信仰説、
「この石傾けば不毛不熟なり」の農業祭祀伝承説などがあり、
なぜか「マラ石」という名称と形のイメージから男根(ペニス)のイメージへと引きつけられるは確かもしれない。
その吸引力の元「ペニスとは何かしら?」を生物科学を目指す親友のS子に調べてもらった。
「ペニスは体外受精をする動物のオスにあって、身体から常時突出しているか、
あるいは突出させることができる器官で、精子をメスの体内に直接送りこむ際に、
これを雌の生殖器に挿入するのに用いられる性器(交接器)であり、
雄の生殖器、特に外性
器のうちのひとつで、
哺乳類では泌尿器を兼ね、睾丸の上部から突き出ているもの。
性的興奮を感じるとペニスは女性器(膣)に
挿入可能な硬さを持つように海綿体が充血して勃起する(1から2の状態)」
「ペニスは勃起すると包皮が剥け自然と亀頭部分が露出し2のような状態になるのが普通だ」とする。
つまりS子の説明からすると、
珍石は2の状態にありながら包皮により亀頭部分が十分露出してないことがみてとれ、
各地の子授かりの神社の神前にある陽石と称されるのを思い浮かべると
珍石が2の状態を示すそれらの石とは明らかに異なることがわかる。
昔の人はペニスについてどのようなイメージを持っていたのか
夏恵子は書架にある古本から過去を覗いてみることにした。
寺の金堂の天井、桟のすき間に当時の画工が落書き㋐をしていた。
下から仰げば桟に隠れ蓮花文様しか見えない。
真ん中の四角い白いところが見える蓮花文様の部分。その間に結構露骨な画工の本能欲情が表現されている
。
これらの絵柄を見てもペニスが勃起した状態が描かれており、
同時に亀頭部分が剥けた状態を見ることができる。
画工の気持をはかり知ることは出来ないが、
聖域の空間においても、本能欲情的な表現は見えないなかに具象的、リアルに描いたことがわかる。
時代は遡り、江戸大衆文化が栄えると春画の世界が広がりをみせ、
多くの浮世絵師が筆をふるい、男と女の情交の絡みを描いている。
その中に見るペニスも大きく勃起した状態を誇張し描いており、
S子のいう皮かぶりでない亀頭を描いていることからも
勃起状態のペニスは包皮がかぶってないのが普通で、絵画表現においてもその状態を描いているのがわかる。
夏恵子はこのようなことから珍石が
「マラ石」と称することに不自然さを感じ得ず、「やっぱり、珍石はマラ石じゃない」と思った。
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「ペニス図」『THE MACMILLAN VISUL DICTIONARY』
1992 より加筆
㋐『芸術新潮』「ひらがな日本美術史 法隆寺金堂板落書」橋本 治
新潮社 1994 より加筆
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