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Kのメモ MAY 3,2014 [店雑記・Kのメモ]



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夏恵子の珍道中記

獅子-14-2


 私たちが各地の神社やお寺でみかける総称「狛犬」は
当初は別個の霊獣で一方を「獅子」、もう一方は「こま犬」と呼ばれていた。
以下、総称狛犬の一体を獅子、一体をこま犬とし記す。

平安時代に「狛犬」が発生したと『獅子狛犬ものがたり』に記されている。

Bsisi3.jpg

現存する獅子、狛犬の原形は
京都御所・紫宸殿賢聖障子(ししんぜんけんじょうのしょうじ)に描かれた一対のもの㊼だとされ、
平安時代末期の文献『類聚雑要抄(るいじゅぞうようしょう)』に
「左獅子 於色黄 口開    右胡麻犬 於色白 口閉」と記されており、
何気なく見過しがちであるが上座から見て左に獅子、右にこま犬であるのは今も同じである

紫宸殿正面の庭を南庭と称するのも興味深い。
 
日本でもっとも古い石造の狛犬とされているのは、
鎌倉時代の作で東大寺南大門にある二体の獅子
で、
北に面して設置されてる(㊾西方㊽東方)。
元は南中門にあったとするが移設の時期は定かではない。

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狛犬表(図-1)を作り、
獅子とこま犬の関係をみる。

Bsisi24.jpg
(図-1)

獅子は口を開けており、こま犬は閉じている。
獅子を阿吽の「阿」、こま犬を「吽」にたとえ、「阿吽の息」などと称している。

これはサンスクリット語に由来した言葉で
双方を合わせて「阿・吽の表情」といい、「阿」は字母の初韻、「吽」は終韻で
「一切万有」の原理を示すとされているらしい。
この「阿吽の表情(息)」がなぜ、狛犬に取り入れられたかは、
寺院門前の左右に立ち守護する金剛力士像に習ったようだと記している。
(参-1)

東大寺南大門の獅子像㊽㊾は金剛力士像に並び置かれている。


飛鳥・山田寺金堂の西石階段側壁に獅子が彫られてられていたことは前記したが
現像としての狛犬の発生がこれだとすると、
坂田尼寺跡-山田寺-百済大寺のラインから珍石の影をイメージする。


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おもしろいのはこま犬に角があること。

『獅子』「高麗にはいなかった狛犬(こま犬)」章に、
こま犬のルーツは中国の辟邪像(へきじゃぞう)にあると記し、
その原像は頭に角がある架空の動物である兕(じ)や怪獣の獬豸(かいち)だとしている。
これが後、仏教の守護獣である獅子とともに、
獅子舞や舞い仮面として伝わったとし、
その一本角の辟邪面が高麗からもたらされたので「高麗の犬」と命名したらしい、と
記している。

しかし、
兕や
獬豸として描かれた絵からは、狛犬のイメージがわいてこない。

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『獅子』「ネパールの宝珠を冠った獅子」章に、
チベットやネパール寺院におかれた「宝珠を頭にのせた獅子像㋚」をみる。

筆者はこの宝珠のようなものに『須弥山』で記した「宇宙卵」をイメージした。

『獅子』著者の荒俣氏は宝珠を「チャクラ(体内から上昇する生命創造エネルギー)とし、
「狛犬は頭上に角をもつ獅子身の霊獣であるが、この角は元来宝珠であった可能性もある。
一般にこま犬は、中国の
兕(じ)や怪獣の獬豸(かいち)など、一角の霊獣をモデルとして
日本でつくられたといわれるが、その起源はさらに古く、ネパールの
幻想的なライオンにつながっているのかもしれない」
と記している。(参-2)

「やっぱり、こま犬は須弥山界をあらわしている」

頭に宝珠はないが獅子と宝珠が表現された三尊仏龕(さんぞんせきぶつがん・加西市)㋜をみながら、

「ストーパの世界に上昇するのかも」と思った。

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日光東照宮のこま犬㋛を見、珍石にかさねる。




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筆者は飛鳥資料館におもしろい企画展があるとよく見に行く。
入口を入ると庭があり、飛鳥の石像物の模造品がたくさん設置してある。
しかし、
全て
向き(方向)を無視した設置がされている。

狛犬みてのとおり、
石像はモニュメントであり、位置や方位はとても重要な要素でもある。

あるとき、
川原の亀石の寸法が庭に置かれているものとあまりにもちがうので館に問うたことがある。
「庭に設置しているのは模造品だから、参考にならない」と言われた。

参考にならないものをどうして展示するのか意味がわからない。

そのようなことが解ってから見ることもなくなったが、
山王権現の原像は現在、吉備媛陵の墓前にあり、
獅子面は背後でみることができない。

高校の時になんとか半身を撮ったピンボケ気味の一枚がある。

筆者のもっている獅噛面の一枚。

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(参考書)

㋚㋛
(参-2)
『獅子』 文 荒俣 宏 写真 大村次郎 集英社 2000
(参-1)・
㊼・
(図-1)・
兕(じ)・怪獣の獬豸
『獅子 狛犬ものがたり』上杉千郷  戎光祥出版 2008より参考・加筆
㊽㊾『東大寺』奈良六大寺大観刊行会 岩波書店 1972より加筆
㋜(三尊石仏龕)『日本美術全集 3』学研 1989より加筆





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